月5日 光る汗 若さぶつけた舞台
市川染五郎「魑魅魍魎的」 一期一会の創作舞踊
「汗がきれいに見えるのには限界がある。いまの僕はまだ、きれいだと思う」。本業の歌舞伎はもとより、現代劇、テレビドラマなどジャンルを超えて意欲的に活動する市川染五郎が、4月5日午後3時から京都の南座で、一期一会の踊りを披露する。題して、「市川染五郎傾奇(かぶき)おどり・魑魅(ちみ)魍魎的(もうりょうてき)」。汗を光らせ、思う存分、若さをぶつけた舞台になりそうだ。
「魑魅魍魎的」は、「僕のいまの最大の武器は動いて動いて動き回れること」という染五郎が、和太鼓や津軽三味線などざまざまなリズムと楽器の音楽で、照明を駆使して踊りまくる創作舞踊。昨年、東京の青山円形劇場で自主公演として初演。関西では初めてだ。
「テーマは“自分のすべての限界”です」。ドラマがあるわけではない。ある人物になりきるという踊りでもない。「ひたすら激しく肉体を動かすだけ。マラソンをダッシュで走り切るような感じかな。魑魅魍魎という言葉のイメージのまま、僕の肉体と踊りで不思議な空間を現出させたい。その中でナマの人間が発するエネルギーを感じていただけたら」
日本舞踊松本流家元・松本錦升という名前も持つ。「踊りたいという欲求が体の奥から突き上げてくるような時がある」という染五郎だが、踊り手として「いまの舞踊界にいろんな意味で危機感を持っている」と明かす。「踊りはそれ自体非常に魅力的な芸能なのに、いま日本で舞踊だけで食べていける踊り手があまりにも少ない。プロの舞踊集団と振付師を育て、舞踊劇というジャンルを確立したいと思っています」
今回の「魑魅魍魎的」もその延長線上で企画されたものなのだろう。
30歳になった節目の年に、昨年大好評だった「アテルイ」の演技で芸術選奨新人賞という大きな賞を受賞。9月には、劇団☆新感線のいのうえひでのり演出で「阿修羅城の瞳」の再演(松竹座)も待ち受けている。
「これからは、どんな世界に行っても、自分の色に染めてゆきたい」
端正な横顔をきりっと上げて、染五郎はそう宣言した。
「魑魅魍魎的」の問い合わせはチケットホン松竹(TEL0570・000489)まで。
「京都は伝統と破壊、そして革新が同居する特別の場所。そこで踊れることが最高」と話す市川染五郎
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